「モチモチの木はどんなところに特徴があるのだろう?」
特徴的な文学作品が多い3年生の中でも最後に学習する文学作品となりますね。
ですから、教材の特徴をよく知り、授業を作っていくことは非常に重要となります。
今回は、「モチモチの木」(斎藤隆介 作 光村図書出版『国語三年下』)の教材分析です。
この「モチモチの木」という教材の特徴はズバリ、これです。
人物の性格を深く多面的に捉えられること
この「モチモチの木」の中心人物は、そう、豆太です。
この豆太の性格について読んでいくことになるわけですが、
性格を捉えることの難しさがそこにはあるわけですね。
教科書で「モチモチの木」の学習のねらいは、
登場人物の性格を捉えること
です。
ただ年間指導計画には、読むことの(カ)が中心指導事項に設定されているので、
登場人物の性格を自分なりの考えで捉え、他者と共有しながら深めること
が本当のねらいと言えそうです。
性格というものについて様々な見方を学ぶのにぴったりな作品といえますね。
豆太は「おくびょう」
モチモチの木の作品の冒頭には、次のように書かれています。
そうです。豆太は「極端におくびょう」な性格です。
その他にも豆太に関しては、次のような性格に関する言葉が出ています。
おくびょう・いばる・弱虫
叙述に正確に読み取ることは重要ですので、このように書かれている時点で、豆太の性格は、
「おくびょうで弱虫」であることは間違いないわけですね。
真夜中に走った豆太はおくびょうを克服したのか
ということで、豆太は「おくびょうで弱虫」となるわけですが、
ここで重要なカギとなる出来事が起こります。
あの豆太がじさまを助けるために、1人で真夜中、ふもとの村まで医者様を呼びに走ります。
しかも、勇気のある子どもだけが見られるというモチモチの木の灯を見たのです。
この出来事をどのように読めばいいのでしょう。
「じさまを助けるために勇気を出した豆太はおくびょうを克服した」
「本当は勇気を持っていた豆太がいよいよ本当の姿を取り戻した」
「豆太は、勇気のある人物だ(勇気を持てるようになった)」
という読み方もできるでしょう。
また、「おくびょうな豆太は、じさまがいなくなるという、自分にとってより恐ろしい方にビビっただけ」
という読み方もできそうですね。
大事なことは、様々な読み方ができるということであり、
そのそれぞれの読み方を出し合い、共有して深めるということなのだと思います。
様々な読み方ができるように教師が視点を与えたり、広げたり、深めたりする役割ができるといいですよね。
結局どっちなのか
それでは、豆太は「おくびょうなのか」「勇気があるのか」、結局のところ、どちらなのでしょう。
叙述には確かに「おくびょう、弱虫」と書かれています。
でも、勇気を出して真夜中に走ったのも事実です。最後にはまた、元に戻っていますが。
私としては、「おくびょうで弱虫だけど、勇気も持っている(勇気が出せる場面もある)」という折衷的な結論になるのかと思います。
「そんな中途半端な」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、性格というのはそういうものなのではないでしょうか。
人を1つだけの性格で表すことなんて不可能でしょう。それぞれにいろんな面があって、場面によって違っていたりして、複雑なのが当たり前ではないでしょうか。
そんな一面的な見方ではなく、複雑で多面的な見方ができるようになる学習であるように思います。
まとめ
今回は、「モチモチの木」の教材分析についてお話してきました。
「モチモチの木」の教材としての特徴は、
・豆太はおくびょうで弱虫であることが叙述してある
・勇気ある行動をどう捉えるかは個人の読み方による
・豆太の性格は多面的に捉えることができる
です。
「モチモチの木」を扱った学習のねらいは、
登場人物の性格を自分なりの考えで捉え、他者と共有しながら深めること
です。
性格の捉え方を学習することで、他の作品でも人物の性格を考えることにつながっていくはずですね。
人物の性格を多面的に捉えることができるような力を育てられる作品だと思います。
こんな作品の特徴を生かした言語活動を設定したいですよね。
小学校国語で扱う他の作品の教材分析も行なっています。
教材研究を進めて授業をもっと魅力的にしていきましょう。
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