「おくりびとは教材としてどこに特徴があるのだろう?」
作品の特徴を授業に生かすことで、魅力的で充実した授業になりますよ。
今回は、「おくりびと」(朽木祥 作 光村図書出版『国語五年』)の教材分析です。
この「おくりびと」の教材の特徴はズバリ、この3つだと思います。
特徴1 主人公の追体験をしながら読める
特徴2 主人公の変化が描かれている
特徴3 作品の鍵となる存在がある

この特徴を押さえておくと、授業づくりがとても充実したものになりますよ。
「おくりびと」の単元のねらい
教科書の中で、この「おくりびと」を扱う単元のねらいは、
物語の全体像を想像する
ことです。
年間指導計画にも、読むことの(エ)が中心指導事項に設定されているので、
物語の全体像を想像することを中心に扱って問題なさそうです。
でも、「物語の全体像とは?」という疑問がわいてくる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、この「物語の全体像」はあいまいな部分があります。
これという明確なものというよりも、作品全体をどう捉えるかという大くくりなものです。
ですので、私としては、
・どんな作品と言えるのか。(それはどんなところからそう言えるのか)
・その作品を読んでどう感じたか。(それはどこからそう感じたのか)
・その作品はなにを伝えようとしているか。(それはどこに現れているか)
このようなことを捉えられることが「物語の全体像」になるんじゃないかと思います。


特徴1 主人公の追体験をしながら読める
1つ目の特徴としては、「主人公の追体験をしながら読める」ということです。
この「おくりびと」という作品は、主人公である「綾」の目線で描かれています。
このような作品は読むことで、視点である人物になりきったような感覚となります。
その人物の見たこと、聞いたこと、感じたことを体験しているかのような感覚ですね。
しかも、人物設定が11歳、物語のきっかけが大きな掲示板のポスター
というありふれた日常ということも人物と同化しやすい設定となっています。
子どもたちも綾になったような感覚で、
不思議な気持ち、新たな感覚を得ていくことを追体験できる作品となっています。
特徴2 主人公の変化が描かれている
2つ目の特徴としては、「主人公の変化が描かれている」ということです。
この作品の中で主人公である綾は、はじめは戦争や原子爆弾のことについて、
遠い昔のことで、自分とのつながりをあまり感じていません。
しかし、自分と同じ名前を見つけたことをきっかけに、
亡くなった当時の顔を見たり、「忘れないでほしい」というおばあさんの言葉を聞いたりしたことで、
自分との関係を見いだしていきます。
このような心情の変化、感覚の変化を主人公に同化しながら、
追体験していくことのできる作品となっているのです。


特徴3 作品の鍵となる存在がある
3つ目は、「作品の鍵となる存在がある」ということです。
ここでいう「作品の鍵」とは、物語が進んでいくに当たって、
重要な役割をするもののことだと思ってください。
例えば、最も重要な鍵として、「名前」が挙げられます。
この作品は、主人公が同姓同名の名前を
納骨名簿から見つけるところからスタートしていきます。
この同姓同名の名前が現代と戦争を結びつける重要な役割を握っているわけですね。
他にも「年齢」「顔(表情)」などが作品の鍵として挙げられると思います。
これらの鍵の役割を読み解いていくことが表現の効果に迫っていくことにもなると思います。
まとめ
今回は、「おくりびと」の教材分析についてお話をしてきました。
「おくりびと」の作品の特徴としては、次の3つが挙げられます。
特徴1 主人公の追体験をしながら読める
特徴2 主人公の変化が描かれている
特徴3 作品の鍵となる存在がある
教科書の中で、この「おくりびと」を扱う単元のねらいは、
物語の全体像を想像する
ことです。
この3つを活用して単元を組み立てていくと、魅力的で充実した単元になっていくと思いますよ。
ぜひ活かしていってくださいね。



教材の特徴と単元のねらいに沿った言語活動を設定できるとばっちりですね。
小学校国語で扱う他の作品の教材分析も行なっています。
教材研究を進めて授業をもっと魅力的にしていきましょう。






コメント