「海の命はどこを押さえたらいいの?」
この作品もまた小学6年生の定番、そして名作中の名作ですね。
作品自体にものすごく魅力、奥深さのある教材です。
今回は、「海の命」(立松和平 文 光村図書出版『国語六年』)の教材分析です。
この「海の命」という教材の特徴はズバリ、コレです。
会話文を生かす
会話文こそが「海の命」で最も重要な特徴だと思います。
この「海の命」の学習のねらいは、
登場人物の関係をとらえ、人物の生き方について話し合いながら、自分の考えを広げること
です。
深い。深いですね。
やはり小学校最後の文学作品にふさわしいねらいとなっています。
このねらいを達成するために、「会話文を生かす」わけです。
それでは、もう少し解説していきましょう。
会話文を生かす
この「海の命」で、私が最も重要だと考えるのは、「会話文」です。
「海の命」はこんなに読みごたえがあり、深い作品なのですが、
その特徴の1つとして、会話文の少なさが挙げられると思います。
なんと、会話文、「9つ」しかありません。
びっくりしませんか?
「え?9つ?」と、これを意外に感じる方は少なくないと思います。
逆に言えば、この9つの会話文はめちゃくちゃ重要だということなんです。
人物やその生き方を分析した先行研究もたくさんありますが、この会話文はめちゃくちゃ重要に扱われています。
「海の命」という作品の中で、会話文は非常に重要な読みの鍵となります。
会話文の分析
「海の命」に出てくる9つの会話文は、次のものです。
①「ぼくは漁師になる。おとうといっしょに海に出るんだ。」(太一)
②「海のめぐみだからなあ。」(父)
③「わしも年じゃ。ずいぶん魚をとってきたが、もう魚を海に自然に遊ばせてやりたくなっとる。」(与吉じいさ)
④「年を取ったのなら、ぼくをつえの代わりに使ってくれ。」(太一)
⑤「千びきに一ぴきでいいんだ。千びきいるうち一ぴきをつれば、ずっとこの海で生きていけるよ。」(与吉じいさ)
⑥「自分では気づかないだろうが、おまえは村一番の漁師だよ。太一、ここはおまえの海だ。」(与吉じいさ)
⑦「海に帰りましたか。与吉じいさ、心から感謝しております。おかげさまでぼくも海で生きられます。」(太一)
⑧「おまえが、おとうの死んだ瀬にもぐると、いつ言いだすかと思うと、私はおそろしくて夜もねむれないよ。おまえの心の中が見えるようで。」(母)
⑨「おとう、ここにおられたのですか。また会いに来ますから。」(太一)
「海の命」立松和平 文(光村図書出版 国語6年)
どれも深い意味を感じられますよね。
その会話文もその時の人物を見事に表現していますし、このように9つを並べて読むだけでも、場面の移り変わりや作品の表現したいものが伝わってくるような気がしませんか。
まさに選び抜かれた珠玉のセリフ。このセリフの扱い方で単元の奥深さが変わりますよ。
「ぼくは漁師になる。おとうといっしょに海に出るんだ。」(太一)
例えば、「ぼくは漁師になる。おとうといっしょに海に出るんだ。」というセリフがあります。
これは太一がまだ幼かったころ、おとうがまだ生きていた頃に太一が周囲に言っていたセリフですね。
このセリフから、太一にとっての夢は「漁師になること」そして、「おとうと一緒に海に出ること」だったということが分かります。
幼い太一にとって、まさにおとうは憧れそのものだったわけです。
さらに、「海に出るんだ」と言っています。
「たくさん魚をとる」とか、「大物をとる」とかではなく、「海に出る」。
海はそれだけ太一にとって特別な場所、憧れの場所でもあるわけです。
そんな特別な場所に憧れの存在であるおとうを奪われるという酷な事件。
太一にとって海はどのような場所になったのでしょうか。
同じように海への憧れを抱き続けていたのか、それとも拭いきれない複雑な思いを抱く場所となったのか、そこに読み手の解釈、考えが関わってきます。
このように会話文をその前後や人物どうしの関係などから読み取っていくことで、その人物の考え方、生き方が分かってきます。
まとめ
今回は「海の命」について、教材分析を行ってきました。
この「海の命」という教材の特徴はズバリ、コレです。
9つしかない会話文を生かす
会話文こそが「海の命」で最も重要な特徴だと思います。
「海の命」を扱った学習のねらいは、
登場人物の関係をとらえ、人物の生き方について話し合いながら、自分の考えを広げること
この9つしかない会話文を使うと、登場人物の関係をとらえ、人物の生き方について話し合いながら、自分の考えを広げることにつなげやすいのではないでしょうか。
教材の特長を活かすことで、効果的な学習にすることができますよ!
この教材の特徴を生かした言語活動も紹介しています。
小学校国語で扱う他の作品の教材研究も行っています。教材研究を進めて授業をもっと魅力的にしていきましょう。
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