「ちいちゃんのかげおくりは何を教えたらいいの?」
この「ちいちゃんのかげおくり」も、悲しくて切なくて、涙なしでは語れないお話ですよね。
今回は、「ちいちゃんのかげおくり」(あまんきみこ 作 光村図書出版『国語三年下』)の教材分析です。
この「ちいちゃんのかげおくり」という教材の特徴はズバリ、コレです。
2つのかげおくりがあること
この「ちいちゃんのかげおくり」という作品は、題名にある通り「かげおくり」が重要です。
しかも、作品の中では「2つのかげおくり」があります。
この「ちいちゃんのかげおくり」の学習のねらいは、
物語に対する感想をもつこと
です。
このねらいを達成するために、「2つのかげおくり」を生かすわけですね。
それでは、もう少し詳しく解説していきますね。
2つの「かげおくり」があること
まず、同じ「かげおくり」という遊びが作品の前半と後半に位置づけられています。
同じ遊びが2つあることで前半と後半が比べやすく、違いが際立つものとなっています。
ただ、同じかげおくりにも関わらず、状況が全く違うことで感情も当然異なります。
そこに読み応えがありますね。
この作品の特徴を生かすことで、「比べる」という情報の整理につながる学習にもなりますし、
作品の読み方の1つとして「変化」や「移り変わり」などと結び付けることができると思います。
ただあくまでも中心的にねらうのは「物語を読んで感想をもつ力」です。
ですので、比べることや変化について学習するのは、この中心のねらいを達成するためであることを忘れずにしたいですね。
2つの「かげおくり」の違いを考えさせるだけでも読みが深まっていきますよ。
1回目と2回目のちがい
2つのかげおくりの1回目と2回目の違いをまとめてみたいと思います。
①人数
最も大きな違いはかげおくりをしている人数です。
1回目は家族4人でしていますが、2回目はちいちゃんたった1人でしています。
家族と離ればなれになってしまい、日に日に弱っていく中でも、家族が帰ってくることを信じて懸命に待ち続けた中での2回目のかげおくりです。
②家族のいる場所
次の大きな違いは家族のいる場所です。
1回目では、横からお父さんが「つぶやき」、お母さんが「横から言い」ます。
2回目では、お父さんの声は「空からふってきて」、お母さんの声も「空からふって」きます。
この表現の違いから1回目のかげおくりではちいちゃんのそばにいてくれた家族は、2回目では遠い空にいることが分かりますね。
③意識の中の出来事
最後の違いは2回目のかげおくりはちいちゃんの意識の中での出来事だということです。
2回目のかげおくりではお父さんとお母さんの声はちいちゃんの耳に「聞こえだしました」という表現になっています。
これは、1回目ではなかった表現です。
つまり、実際に言っているのではなく、ちいちゃんに聞こえている声だということです。
聞こえるはずのない声が聞こえている、このことが切なさを感じさせますね。
とらえ方によって感想が異なる
子どもに感想をもたせると様々な感想が出てきます。
分類するのはあまり気が進みませんが、分かりやすくするとその感想は大きく3つに分かれるのではないかと思います。
まず、ちいちゃんは可哀想だという立場です。
家族と離れ、1人で死んでしまったちいちゃんの境遇を感じとっての感想ですね。
この感想はきちんと人物の境遇を読み取っているので抱くことのできる感想です。
次に、全く逆のちいちゃんは幸せな最期だったのではないかという立場です。
ちいちゃんは最期に空の上で家族と出会い、花ばたけの中できらきらと笑っている、という描写があります。
この描写を大切にする立場からは幸せだったのではないかという感想が出てきますね。
そして、それぞれの読みをふまえて、境遇としては可哀想だけれども、家族と一緒になれた最期は幸せだったのではないか、という感想です。
この読みはどちらの感想も認めなければ出てこないので、レベルとしては高いものですね。
この読みまで子どもたちをレベルアップさせたいところです。
さらに、どこをどのように読んでどう思ったのか、といった読みの根拠、感想、その感想を表現した言葉などによって1人1人の感想にオリジナリティが生まれてきます。
どんな感想でも、文章のどこを根拠としているのか、をはっきりさせることが大切です。
まとめ
今回は、「ちいちゃんのかげおくり」の教材分析についてお話してきました。
「ちいちゃんのかげおくり」の教材としての特徴は、
・2つのかげおくりがあること
・1回目と2回目の表現の違いがあること
・とらえ方によって感想が異なること
です。
「ちいちゃんのかげおくり」を扱った学習のねらいは、
物語に対する感想をもつこと
です。
心が揺さぶられる表現が数多くあり、どの表現に着目するのかで抱く感想が違ってきます。
切なさ、悲しさ、ぬくもりなどの感想表現を学ぶのにもぴったりですね。
豊かな表現と自分の感想を表す語彙を獲得できる作品です。
場面の比較や読みの視点の違いから読みを深め、豊かな感想を抱かせたいですね。
小学校国語で扱う他の作品の教材研究も行っています。
教材研究を進めて授業をもっと魅力的にしていきましょう。
コメント
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